私は、幼い頃から両親の激しい喧嘩を見て育ちました。大人になるにつれ家庭不調和は悪化し、生長の家を信仰していた祖母と藁にも縋る思いで近所の公民館で開催された生長の家の講演会に参加したのをきっかけに平成16年入信致しました。その後青年会員となり、秋田教区で教区青年会委委員長を拝命、活動に邁進する日々でしたがいつも心に影を落とす家族不調和を何とか解決したく、思い切って保育士の仕事を辞めて3年前に宇治へと参り、現在は生長の家宇治別格本山に奉職しております。
そこで私はロードバイクと出会います。2年前の夏、先に入部していた友人からSNI自転車部へ入部を勧められたのがきっかけでした。「自転車が世界平和につながるんです」力強いその言葉にも始めはピンときませんでした。しかし、Facebookを見ても、総裁先生も自転車に乗っておられる。うん、何事もやってみなければわからない、そして私も総裁先生が感じておられる世界を見てみたい。そんな思いがわき、すぐにロードバイクを購入、自転車部へも入部しました。
初めて乗ったのは土手沿いの長く続く一本道。あの日の感動は今でも覚えています。キラキラ輝く川の水面を横目に、風を切って走る爽快感、ぷかぷか浮かぶ雲に目をやりながら広い空のもとを走っていると、まるで空の中を飛んでいるんじゃないかという錯覚に陥ります。なんか楽しいぞ。そんなこんなで私の自転車ライフが始まりました。
去年の9月の事です。「多宝塔ヒルクライムに出場しませんか?」と声をかけていただき、思い切って参加する事にしました。そこで思いもよらぬ体験をする事ができました。
この多宝塔ヒルクライムは、大阪教区が主体となって開催されたイベントで、和泉葛城山(いずみかつらぎさん)山頂を目指し、標高差が600m近くある急な坂道を自転車で登ります。スタート地点の大威徳寺には多宝塔があることから、「多宝塔ヒルクライム」と命名されました。
キツイキツイと聞いていた多宝塔。やはり始めの2キロがとてもきつく、今回はさすがに足をつくかもと出だしからめげました。もうダメだと思った時、いつもポケットに聖経(※1)のお守りを入れているのでそれに向かって神様助けてー!と思いを込めた瞬間、お守りを忘れてきた事に気づき愕然とします。しかしまた次の瞬間、「私自身が生命の実相(※2)だった」と気づきます。開会式で大阪教区教化部長の久利修先生が多宝塔の説明の際、「私たち自身が生命の実相で如来、仏です」というお話をしてくださり、感動したばかりだったのでそんな思いになれたのだと思います。そして、ああ私はまだ物質がアルと思って生きている、お守りという物質に囚われてその奥にある真理に目を向けていなっかったと気づきました。私は聖経に書かれてある真理そのもの!そう思ったら力がぐんぐん湧いてきて嬉しくてたまらなくなり、思わず「お父さんお母さんありがとうございます。」と唱えていました。そして今度はなぜか中学・高校の頃の事を思い出しました。私はずっと運動部で、父はその度親の会の会長を引き受け、お役に邁進してくれました。しかし、試合の応援となると熱くなり、相手チームやこちらチーム、更には審判にまで激しく野次を飛ばし、私はそれが嫌で嫌で、試合の度「今日は叫ばないで」とか「来なくていい」と頼み込みました。それでも訴えは聞き入れてもらえず、私はチーム内でも肩身が狭くいつも悲しい思いで試合に臨んでいました。その事を思い出した時ふと、あれは父の愛だったと初めて思えたのです。私を愛するが故に試合にも勝ってほしくてつい叫んでしまっていた。「え?私お父さんに愛されていたの?」そう思ったら「わー!」と泣いてしまい自分でも驚きました。そして、まだまだ色んな想いが湧き出します。それなのに私はいつも父に怯え、恐怖し、私に対しても無関心で愛情を感じていないんじゃないかと誤解していました。「お父さんどんなに寂しかっただろう。本当に申し訳なかった!」そんな思いも出てきて更に声を上げて泣きました。もう、坂がきついとかそんなことより、ごめんないとありがとうが一気に出てきてどうしようもなくなりました。そして、自分は無意識に不仲の両親にあなたたちのせいでこんなに不幸なんですと仕返ししたい気持ちが働いていた事、もっともっと愛してほしい求めの気持ちばかりあった事に気づきました。そうじゃなかった。深い愛でずっとずっと愛されてきたんだとわかりました。そして、愛されているという悦びがこんなにもあったかくて心地よいものなのかと感動で益々涙が溢れました。よし、もう本当に幸せになる。そう決めました。そして、私の幸せを両親も喜んでくれると確信しました。ここから先幸せしかないという絶対的安心感に包まれて感動のゴールへと至りました。
道の落ち葉も、雨で濡れた路面も、木も、空気も空も雲も、皆に祝福されているのがよくわかり、私もそれらをいつも以上に愛おしく感じました。宇治までの帰り道、急に、「わあ、私結婚するんだあ」という気持ちがじんわりと湧いてきて、それはそれは幸せな気持ちになりました。まだ相手もいないのに、実に不思議な、何て言っていいかうまく言葉にできませんが、とにかくもう決まったという幸福感を胸に岐路につきました。帰宅後父にレースのリザルトと写真を送ると「すごい!」と返信があり、ただそれだけの事が本当に嬉しかったです。
幼い頃、できちゃった結婚で生まれたと知った私は両親の不仲な姿を見て、恨むというより生まれてきてしまってごめんなさいという思いを抱き続け、自分の命をずっと責めてきました。そんな思いが今回見事に木っ端微塵に消えました。またその思いが湧いてくるんじゃないかと不安もありましたがナイものはナイんだと、アルのは実相だけなんだと信念が持てました。全てがこの瞬間につながり、宇宙が動き出したような気持になりました。
私の自転車ライフはまだ始まったばかりですが、日々三正行(※3)を励行し、現象の奥に実相を観、内なる神の囁きに耳を傾け今自分にできることを具体的に行動に移し、世界平和実現のお役に立たつ自分であり続けます。
※1 聖経(せいきょう)……生長の家創始者・谷口雅春氏が書いた生長の家のお経。
※2 実相(じっそう)……生長の家では、すべての人間は神の子であり、素晴らしい存在なのが本当の姿(実相)だと説き、目の前に現れているのは現象の世界であり、心が創った世界であると教えられています。
※3 三正行(さんしょうぎょう)……三つの正しい行い。①神想観(しんそうかん)と呼ばれる、生長の家独特の瞑想法。②聖典・聖経・讃歌の拝読。③愛行(他へ愛を行うこと)。この3つを毎日実践することを進めています。